新しい体験と、続いていくつながり

 先週は久々に日本でした。今回の出張では、コジマプロダクションとともに取り組んできた、現実の場所とデジタルの世界をつなぐ二つの体験を披露することができました。そして、講演やイベントを通じて、Ingress以来のつながりを、あらためて感じる旅にもなりました。

新しく作った体験を楽しんでもらう喜びと、以前に作った体験が、今も誰かの暮らしや思い出の中に残っている嬉しさ。その両方を感じた一週間でした。

Death Strandingの世界を、現実の街で

コジマプロダクション10周年記念イベント「Beyond The Strand」で、Niantic Spatialとのパートナーシップの一つのマイルストーンとなる体験を実現しました。

そもそもの始まりは、昨年発表したパートナーシップです。この発表の際に、新しい技術を活用したエンターテイメントをともに模索していく、という宣言として、コンセプトムービーを公開しました。

そして今回、10周年記念イベントに合わせて、Death Strandingの世界観を現実世界で体験できるARアプリ「Death Stranding Odradek: Tokyo Prototype」と、コジマプロダクションのオフィスをVR空間で体験できる「Inside Memories」を制作しました。この二つの体験を通じて、そのコンセプトに一歩近づけたと思っています。

まず、ARアプリの「Death Stranding Odradek: Tokyo Prototype」は、麻布台ヒルズの会場周辺で、実際に街を歩きながら配送を体験できます。その道中では、現実の道にゲーム内のような看板が現れ、Likeを送ることができます。そして、ゲームに登場する特殊な雨「時雨」が降り、謎の存在「BT」が現れます。

体験を一緒に作り上げたのは、拡張現実の未来世界を批判的に描いた映像作品「Hyper Reality」で話題を呼んだKeiichi Matsuda率いる、ロンドンを拠点に活動するLiquid City。見慣れた街にDeath Strandingの世界が重なることで、いつもの道が冒険の舞台に変わります。ゲームでおなじみの赤ちゃん「BB」と戯れることもできます。最後には、息を呑むような展開も待っています。

ぜひ会場を訪れて、その目で、足で、確かめてみてください。もちろん、周囲に気をつけて、安全にお楽しみください。サウンドにも力を入れているので、周囲の音が聞こえる音量で、音の演出もぜひ楽しんでください。次に訪れたときにも体験を思い出すような、見たことのない麻布台ヒルズに出会えるはずです。


コジマプロダクションのオフィスを、VRで訪ねる

VRでは、コジマプロダクションのオフィスをツアーで体験できる「Inside Memories」を制作しました。日本語ガイド役は、なんと津田健次郎さんです。

有名なルーデンスの部屋や、サインボードのある社内カフェ、サウンドスタジオなどを、あの心に染み入る声に案内されながら、360度見回すことができます。

実際のオフィスをスキャンし、空間の質感まで立体的に再現する「ガウシアンスプラッティング」という技術を使っています。コジプロの社員の方からも「いつも見てるまんま」と言っていただけたのは嬉しかったです。

一緒に制作したのは、アムステルダムを拠点にするWonderment By Design。公開前日まで小島監督にフィードバックをいただき、オフィスを再スキャンするなど、最後の最後まで調整を重ねました。ぜひ、細かなところまで見回してみてください。

ネット上でも、体験してくださった方々の興奮と喜びの声が届いていて、嬉しいです。これからの可能性を考えるうえでも、皆さんの率直な感想を聞かせてもらえたらと思っています。ぜひこの機会に体験し、SNSなどで感想を共有してもらえたら嬉しいです。

どちらの作品も、小島監督と平野社長をはじめ、コジマプロダクションのスタッフの皆さんの熱意とご協力なくしては、このような形で実現することはできませんでした。

プロジェクトをリードしてくださった山本さん、古川さん。最後までスキャンやフィードバックを繰り返してくれた内田さん、雨宮さん。津田さんの録音と脚本を手掛けていただいた矢野さん。会場設営でご尽力いただいた山下さん。何度もARアプリをテストし、フィードバックをいただいた新川さん。ありがとうございました。

また、現場のセットアップを手掛けた電通の金林さん、堤さん、日々のオペレーションを支えてくれているeFarmの海野さんをはじめとするスタッフの皆さん、そして会場周辺の利用にご理解いただいた森ビルの皆さんに、心より感謝します。

会場の出口には、来場した方々のサインが並ぶ壁があります。帰国間際に、ご厚意で僕も書かせていただくことになりました。最後に、忘れられない思い出ができました。とても光栄でした。




押井守監督にも体験していただきました

今回、もう一つ嬉しかったこと。Death Stranding 2にピザ屋として登場し、映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の監督としても知られる押井守監督に、どちらの作品も体験していただけたことです。

VRでは、何度もハンドトラッキングの精度を確かめながら、ルーデンスに手を伸ばしていらっしゃいました。ARでは、BBと目を細めて触れ合い、声を上げながら街をスキャンし、体験後には「とても楽しかった」と言っていただけました。


作った体験を、こんなにも楽しんでいただけるとは。なんという…。ありがとうございました!

押井監督の最新映画「装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女〈ヘクセ〉」の試写にもご招待いただきました。まさしく押井作品でした。自分も戦場にいるんだ、と気づかされるラストシーンには、息を呑みました。後編が待ちきれません…!

ソニーで聞いた、体験のその後

今回の出張中には、ソニー本社の「先端技術セミナー」で講演させていただきました。

800人以上の社員の方から参加申し込みがあったそうで、どうなることかと思いましたが、会場の皆さんがあたたかく、笑っていただきながらの講演になり、ほっとしました。

特に嬉しかったのは、講演をきっかけに聞かせていただいたお話です。位置情報ゲームを通じて、家にひきこもっていたご家族が外に出るようになったり、家族の絆が深まったりしたという方から、直接お礼を伝えていただきました。10年以上前の京都アノマリーに参加したIngressエージェントの方からも、ご挨拶いただきました。

作っているときには、その先で誰かの暮らしがどう変わるかまでは見えません。何年もたって、こうして体験の「その後」を聞かせてもらえるのは、本当に嬉しいことです。

ご推薦いただいた大口さん、近藤さん、ありがとうございました。立体映像を楽しめる小型3Dディスプレイ「ELF-MN1」、予想を大幅に上回る反響とのこと、おめでとうございます!

六本木の街と、10年以上前の記憶

森ビルさんからは、六本木アートナイトのオープニングセレモニーにお招きいただきました。

実は2015年、Ingressでアートナイトに参加したことがありました。そのときは、夜の六本木ヒルズをゲーム上で取り合い、勝利した陣営の色でライトアップされる、という作品を、ライゾマティクスの真鍋大度さんたちと実現しました。

六本木ヒルズそのものをインタラクティブアートにしてしまう、という…。今思うと、よく実現できたなと思います(笑)。

今回、麻布台ヒルズでAR体験を作りながら、こうした街とデジタルをつなぐ取り組みを思い返す機会にもなりました。

アートイベントを長く続けるのは大変だと思いますが、こういう時代だからこそ、アートがその力を見せてくれるんじゃないかと思います。森ビルさん、応援しております。

森美術館の森万里子展とTOKYO NODEのヨシロットン展も見てきました。特にヨシロットン展は、思った以上に見入ってしまい、予定より長く滞在してしまいました…! ご招待ありがとうございました。

最後に、長く続く集まりの場所へ

話は出張の初日に戻りますが、日本に到着して駆けつけたのが、八丁堀のQuint Arrow。IngressとQuint Arrowは実は同い年で、その14周年記念ミートアップでした。

ここでは何度もミートアップを開かせていただきました。ジョン・ハンケが自伝『ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険 グーグルアースからイングレス、そしてポケモンGOへ』を出版した際の、出版記念サイン会も、ここが会場でした。壁には、ジョンをはじめ、僕たちもサインを書かせていただいています。


最近では、ポケモンGOのコミュニティにも愛されているとのこと。ゲームをきっかけに人が集まる場所が、こうして続いているのは嬉しいです。

長年の感謝を込めて、14周年記念ゲストブックを贈らせていただきました。最初のページには、ジョンからのメッセージも入っています。ぜひ皆さんもQuint Arrowを訪れて、ゲストブックに記帳していってもらえたら嬉しいです。

新しい体験を作ることと、そこから生まれたつながりが長く続いていくこと。今回の日本出張では、その両方に立ち会えた気がします。

お会いした皆さん、一緒に作ってくださった皆さん、本当にありがとうございました。


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About

川島 優志 Masashi Kawashima

米Niantic Spatial Inc. 副社長。 Googleを経てNianticに参画し、『Ingress』のUXデザインや 『ポケモンGO』プロジェクトの立ち上げに携わる。