2022/12/14

Ingress の10周年を振り返って

 Ingressが今年10周年を迎えました。

それに伴い、Advent Calendar へのお誘いをいただいたので、この場を借りて個人的に思い出深い記憶を振り返ってみたいと思います。

近年エージェントになった方は、かつてはそんなこともあったのか、と楽しんでいただけたらと思います。

僕目線なのですべてはカバーできていませんが、お許しください。

僕がNianticにデザイナーとして加わったのは2013年。

東京、六本木のミートアップ

Ingressはベータテスト終了に向けて動いている頃でした。当時、日本人は僕一人。日本のユーザーの声を直接聞こうと日本に飛び、最初に主催したミートアップイベントは2013年、大阪と六本木でした。緑と青のカクテルを作ってもらい、ジョンが自分で撮影したビデオメッセージを持参していったんです。こんなビデオでした。先日、あまりの懐かしさにジョンにこのビデオを見せたら、「Who’s that guy. (この男は誰だ)」と返ってきました(笑)。


2014年の3月、京都バーストオペレーションは、はじめて一人でホストしました。ロサンゼルスからブライアン・ローズに「大丈夫だ!」と励まされながら。この写真に写っているのが参加者のほぼすべて。この頃のイベントは数十人くらいでした。このときはイベントの予算がだいたい6万円($500)くらいだったと記憶してます。アフターパーティーは喫茶店の貸し会議室。和気あいあいでした。


京都バーストオペレーションは26人…!

その年の5月に東日本大震災のあった石巻でのミートアップをGoogleの復興支援プロジェクトの一貫として開催。ジョンも来日して「がんばろう石巻」の前で黙祷を捧げました。

がんばろう石巻の前で黙祷を捧げるジョン

震災で失われた建物をポータルとして蘇らせた「キオクのポータル」や、津波に耐えた石巻のサン・ファン・バウティスタ号と、かつて辿り着いたカリフォルニア州のメンドシノ岬をリンクでもう一度つなぐ試みをしたり。80人ものエージェントが石巻を訪れてくれたのは本当に嬉しかった。後のNianticとしての継続的な被災地支援につながりました。

震災で流された施設をポータルで思い出す


アメリカのメンドシノ岬と

石巻のサン・ファン・バウティスタ号を

400年の時を超えて再びつないだ!
石巻まで来てくれたエージェントたち




その年の12月の東京アノマリーは参加者は、iOS版がサービス開始されたことで、なんと参加者5600人に膨れ上がりました。日本列島を沈める巨大なコントロールフィールドが形成され、真緑に染まったスキャナに、再び来日したジョンとバグじゃないかと新橋駅で驚愕したのがよい思い出です。このエンライテンドのフィールドを壊すために、雪の襟裳岬へと走ったレジスタンスのエージェントも英雄でしたね。

日本を覆ったコントロールフィールド

エージェントだった真鍋大度さんがDJやVJをしてくれたり、ローソンが公式パートナーとして参加してくれて、からあげくんを賞品にできたり。半年前とは何もかもが様変わり。

自分のスピーカーを担いでDJに来てくれたエージェントdaitomatiks

ステージで5000人を前にして、感極まって一瞬固まってしまったのを今でも憶えています。

ダルサナ東京アノマリーに来てくれた5600人


この年、忘れられないイベントのもう一つは、Ingressがメディア芸術祭で大賞を受賞したこと。ゲームとしては、Wii Sports以来の快挙でした。オリジナルのパワーキューブを作って、真鍋大度さん率いるライゾマティクスの皆さんとインタラクティブな展示を作り上げました。

メディア芸術祭大賞を受賞して作られた展示

翌年の2015年3月、再び京都へ。昨年26人だったとはとても思えない、6000人の行列に朝から圧倒され、待たせる申し訳無さにジョンとカードを配って回りました。桜の花の下で、ジョンが「まるで夢を見ているようだ…」とつぶやいてました。門川大作京都市長がセレモニーに来てスピーチをしてくれたり…立派なステージショーが展開されたり。昨年の今ころは、喫茶店2階の貸し会議室で済んだイベントが、6000人収容できる国立京都国際会館に…。

一年前の26人から、6000人超へ…!
ジョンも嬉しくてノリノリ


この年、ナイアンティックはグーグルから独立。会議室2つだけの、小さいけれども楽しい新オフィスへ移りました。

エージェントから届いたバイオカードで埋め尽くされた新オフィスの壁

新しいオフィスで、エージェントから届いたバイオカードを並べるジョン

僕はタイトルがアジア統括となって、日本だけでなく、台湾や韓国のイベントにも力を入れました。地震で傷ついた台南でイベントを開いたときは、次期大統領候補と言われる市長もスピーチに来てくれました。台湾から日本へ、エージェントたちが行き来していました。僕は日本を出て、外国で生きてきたので、国や言語を超えることの難しさも素晴らしさも体験してきました。エージェントが国境を超えて協力し、不可能に思える偉業を成し遂げていく姿に、ものすごく感動したのを覚えています。


台南地震への祈りを込めて現地で作られた折り鶴のフィールドアート
台南市で行われたアノマリー
新台北市で行われたアノマリー
香港で行われたアノマリー


エージェントが作ってくれた素晴らしいオリジナルグッズの数々も深く記憶に残っています。イベントに行くと数え切れないほどのとてつもない創造力に溢れたグッズに囲まれ、本当に幸せでした。仕事場のデスクはいただいたグッズで埋め尽くされました。同人誌もコミケにまで馳せ参じて買えるものは全部集めていたと思います。自分の切手やスタンプまで作られていたのにも驚きました。


エージェントが作りあげたグッズでいっぱいのデスク

同人誌もたくさん買いました


アノマリーのあとの戦利品がもう並べきれない


自分やジョンの切手まで作られて驚いた…

2016年、東京で再びアノマリーが開かれ、この時お台場に集まったのは15000人。パートナーの伊藤園さんはIngress自販機を作ってしまい、WillerさんはIngressバスを現地に運び、フジテレビの壁面は緑に染まり、日本科学未来館の地球儀にコントロールフィールドが投影されました。もうなにがなんだか夢のようでした。GORUCKイベントも、もう理解が及ばないほどで、その熱さに驚かされました。

15000人が集結したお台場、Aesis Nova アノマリー


2017年、富士急ハイランドを貸し切ってのエージェントオリンピアード。ニコニコ生放送のディレクターさんがハードコアエージェントで、見事な生放送を実現してくれました。全国から選ばれたエージェントたちの激しい戦いは凄まじかったですね。アメリカから駆けつけたストーリー作者でありゲームデザイナーのラザがリアルタイムで色々仕掛けていくのも見応えがありました。僕の誕生日と重なって、会場でサプライズのハッピーバースデーセレブレーションがあって、生中継のニコニコ動画の弾幕でみなさんにも祝ってもらったのがこそばゆい思い出です。

イベント中にサプライズで誕生日祝を…涙

2018年には、なんとIngressのアニメも公開されました。フジテレビ、Netflixさんとのパートナーシップで実現したフルCGのアニメは、スタジオで声優さんの収録にも参加させていただいたり、得難い体験ができました。オープニングとエンディングは、ジョンが気に入って直接交渉したイギリスのAlt-J。特にエンディングは、担当してくれたデザイナーもエージェントでものすごい愛のこもっためちゃかっこいい出来栄えなので、全エージェントに見てほしい…。未視聴の方はぜひNetflixで御覧ください。そしてADAの声優、緒方恵美さんはプロモーションでもすごくて、キヅナアイさんとのコラボはトラッカーまで背負って…エージェントとしても経験豊富なだけにものすごくIngressへの愛を感じました。




ミッションデーも日本各地、世界各地で展開され続け、エージェントの皆さんの自治体や商店街を巻き込む力、地元への愛情、に感銘を受けてきました。独創的なミッションメダルの数々は、本当に素晴らしくて、今も驚かされ続けています。聖★おにいさんの作者の中村光さんがエージェントだったことで、作品の中でも紹介されたりした縁で、大日本印刷さんとのパートナーシップを通して実現した、聖★おにいさんコラボミッションも嬉しかった…。ミッションの文化は素晴らしくて、Ingressの中だけなの、本当にもったいないと思っていて、なんとかできないかと思っていますので、もしなにか動きを起こせたら、ぜひその時はご協力ください!

福岡ミッションデーは雪嵐の中だった…!


2019年、世界はCOVID-19によるパンデミックに突入しました。けれど、オンラインで、エージェントたちは交流を続け、工夫を重ねていました。オンラインのIngress First Saturdayに参加して、みんなで集合写真をとる。自分も参加してみて思いましたが、どんな状況でも人がつながり、楽しむ道を見つけ出す。そして、それが未来につながっていく。エージェントに学ばされました。


2022年、10周年を迎える年、ロサンゼルスで数年ぶりに行われたリアルアノマリーに参加しました。エージェントたちの戦いに久しぶりに参加でき、ブライアン・ローズと二人で肩を組んだ時は、こんな時がまた来るなんて、と思いました。


ブライアンとロサンゼルスで


そして、自分の生まれ育った横浜の地でも数年ぶりにアノマリーが開かれる、心から楽しみにしていた矢先、新型コロナ陽性反応が出てしまい、皆さんと会うのは先延ばしになってしまいました。

横浜の地で、皆さんがまた新しい歴史を作り、頒布会を楽しんでいるのを見て、アメリカで一人地団駄を踏んでいました。でも、それよりも、SNSに流れてくる、久しぶりのアノマリーを楽しむ皆さんの笑顔や楽しそうなメッセージを読むのが、本当に嬉しくて、画面を見ながらニコニコしていました。


よかった、本当に、よかった。


今まで、続けてくれて本当にありがとう。

新しく、始めてくれて、本当にありがとう。


Ingressが今も続いているのは、皆さんの支えがあってこそです。

どうかこれからも、Ingressがずっと続いていけるように、サポートしてもらえたら嬉しいです。


こうして振り返ると、この10年のあいだに、数え切れないドラマが生まれてきました。

皆さんは自分の見ている世界を変え、新しい世界を作り上げてきたんだと思います。

そしてその旅は、これからも続いていきます。

ジョンも、Ingressのこれからを話している時はとても楽しそうなんですよ。

ぜひ、これからも、皆さんと一緒に歩いていけたらと願っています。


感謝と、尊敬を込めて


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