2022/12/14

Ingress の10周年を振り返って

 Ingressが今年10周年を迎えました。

それに伴い、Advent Calendar へのお誘いをいただいたので、この場を借りて個人的に思い出深い記憶を振り返ってみたいと思います。

近年エージェントになった方は、かつてはそんなこともあったのか、と楽しんでいただけたらと思います。

僕目線なのですべてはカバーできていませんが、お許しください。

僕がNianticにデザイナーとして加わったのは2013年。

東京、六本木のミートアップ

Ingressはベータテスト終了に向けて動いている頃でした。当時、日本人は僕一人。日本のユーザーの声を直接聞こうと日本に飛び、最初に主催したミートアップイベントは2013年、大阪と六本木でした。緑と青のカクテルを作ってもらい、ジョンが自分で撮影したビデオメッセージを持参していったんです。こんなビデオでした。先日、あまりの懐かしさにジョンにこのビデオを見せたら、「Who’s that guy. (この男は誰だ)」と返ってきました(笑)。


2014年の3月、京都バーストオペレーションは、はじめて一人でホストしました。ロサンゼルスからブライアン・ローズに「大丈夫だ!」と励まされながら。この写真に写っているのが参加者のほぼすべて。この頃のイベントは数十人くらいでした。このときはイベントの予算がだいたい6万円($500)くらいだったと記憶してます。アフターパーティーは喫茶店の貸し会議室。和気あいあいでした。


京都バーストオペレーションは26人…!

その年の5月に東日本大震災のあった石巻でのミートアップをGoogleの復興支援プロジェクトの一貫として開催。ジョンも来日して「がんばろう石巻」の前で黙祷を捧げました。

がんばろう石巻の前で黙祷を捧げるジョン

震災で失われた建物をポータルとして蘇らせた「キオクのポータル」や、津波に耐えた石巻のサン・ファン・バウティスタ号と、かつて辿り着いたカリフォルニア州のメンドシノ岬をリンクでもう一度つなぐ試みをしたり。80人ものエージェントが石巻を訪れてくれたのは本当に嬉しかった。後のNianticとしての継続的な被災地支援につながりました。

震災で流された施設をポータルで思い出す


アメリカのメンドシノ岬と

石巻のサン・ファン・バウティスタ号を

400年の時を超えて再びつないだ!
石巻まで来てくれたエージェントたち




その年の12月の東京アノマリーは参加者は、iOS版がサービス開始されたことで、なんと参加者5600人に膨れ上がりました。日本列島を沈める巨大なコントロールフィールドが形成され、真緑に染まったスキャナに、再び来日したジョンとバグじゃないかと新橋駅で驚愕したのがよい思い出です。このエンライテンドのフィールドを壊すために、雪の襟裳岬へと走ったレジスタンスのエージェントも英雄でしたね。

日本を覆ったコントロールフィールド

エージェントだった真鍋大度さんがDJやVJをしてくれたり、ローソンが公式パートナーとして参加してくれて、からあげくんを賞品にできたり。半年前とは何もかもが様変わり。

自分のスピーカーを担いでDJに来てくれたエージェントdaitomatiks

ステージで5000人を前にして、感極まって一瞬固まってしまったのを今でも憶えています。

ダルサナ東京アノマリーに来てくれた5600人


この年、忘れられないイベントのもう一つは、Ingressがメディア芸術祭で大賞を受賞したこと。ゲームとしては、Wii Sports以来の快挙でした。オリジナルのパワーキューブを作って、真鍋大度さん率いるライゾマティクスの皆さんとインタラクティブな展示を作り上げました。

メディア芸術祭大賞を受賞して作られた展示

翌年の2015年3月、再び京都へ。昨年26人だったとはとても思えない、6000人の行列に朝から圧倒され、待たせる申し訳無さにジョンとカードを配って回りました。桜の花の下で、ジョンが「まるで夢を見ているようだ…」とつぶやいてました。門川大作京都市長がセレモニーに来てスピーチをしてくれたり…立派なステージショーが展開されたり。昨年の今ころは、喫茶店2階の貸し会議室で済んだイベントが、6000人収容できる国立京都国際会館に…。

一年前の26人から、6000人超へ…!
ジョンも嬉しくてノリノリ


この年、ナイアンティックはグーグルから独立。会議室2つだけの、小さいけれども楽しい新オフィスへ移りました。

エージェントから届いたバイオカードで埋め尽くされた新オフィスの壁

新しいオフィスで、エージェントから届いたバイオカードを並べるジョン

僕はタイトルがアジア統括となって、日本だけでなく、台湾や韓国のイベントにも力を入れました。地震で傷ついた台南でイベントを開いたときは、次期大統領候補と言われる市長もスピーチに来てくれました。台湾から日本へ、エージェントたちが行き来していました。僕は日本を出て、外国で生きてきたので、国や言語を超えることの難しさも素晴らしさも体験してきました。エージェントが国境を超えて協力し、不可能に思える偉業を成し遂げていく姿に、ものすごく感動したのを覚えています。


台南地震への祈りを込めて現地で作られた折り鶴のフィールドアート
台南市で行われたアノマリー
新台北市で行われたアノマリー
香港で行われたアノマリー


エージェントが作ってくれた素晴らしいオリジナルグッズの数々も深く記憶に残っています。イベントに行くと数え切れないほどのとてつもない創造力に溢れたグッズに囲まれ、本当に幸せでした。仕事場のデスクはいただいたグッズで埋め尽くされました。同人誌もコミケにまで馳せ参じて買えるものは全部集めていたと思います。自分の切手やスタンプまで作られていたのにも驚きました。


エージェントが作りあげたグッズでいっぱいのデスク

同人誌もたくさん買いました


アノマリーのあとの戦利品がもう並べきれない


自分やジョンの切手まで作られて驚いた…

2016年、東京で再びアノマリーが開かれ、この時お台場に集まったのは15000人。パートナーの伊藤園さんはIngress自販機を作ってしまい、WillerさんはIngressバスを現地に運び、フジテレビの壁面は緑に染まり、日本科学未来館の地球儀にコントロールフィールドが投影されました。もうなにがなんだか夢のようでした。GORUCKイベントも、もう理解が及ばないほどで、その熱さに驚かされました。

15000人が集結したお台場、Aesis Nova アノマリー


2017年、富士急ハイランドを貸し切ってのエージェントオリンピアード。ニコニコ生放送のディレクターさんがハードコアエージェントで、見事な生放送を実現してくれました。全国から選ばれたエージェントたちの激しい戦いは凄まじかったですね。アメリカから駆けつけたストーリー作者でありゲームデザイナーのラザがリアルタイムで色々仕掛けていくのも見応えがありました。僕の誕生日と重なって、会場でサプライズのハッピーバースデーセレブレーションがあって、生中継のニコニコ動画の弾幕でみなさんにも祝ってもらったのがこそばゆい思い出です。

イベント中にサプライズで誕生日祝を…涙

2018年には、なんとIngressのアニメも公開されました。フジテレビ、Netflixさんとのパートナーシップで実現したフルCGのアニメは、スタジオで声優さんの収録にも参加させていただいたり、得難い体験ができました。オープニングとエンディングは、ジョンが気に入って直接交渉したイギリスのAlt-J。特にエンディングは、担当してくれたデザイナーもエージェントでものすごい愛のこもっためちゃかっこいい出来栄えなので、全エージェントに見てほしい…。未視聴の方はぜひNetflixで御覧ください。そしてADAの声優、緒方恵美さんはプロモーションでもすごくて、キヅナアイさんとのコラボはトラッカーまで背負って…エージェントとしても経験豊富なだけにものすごくIngressへの愛を感じました。




ミッションデーも日本各地、世界各地で展開され続け、エージェントの皆さんの自治体や商店街を巻き込む力、地元への愛情、に感銘を受けてきました。独創的なミッションメダルの数々は、本当に素晴らしくて、今も驚かされ続けています。聖★おにいさんの作者の中村光さんがエージェントだったことで、作品の中でも紹介されたりした縁で、大日本印刷さんとのパートナーシップを通して実現した、聖★おにいさんコラボミッションも嬉しかった…。ミッションの文化は素晴らしくて、Ingressの中だけなの、本当にもったいないと思っていて、なんとかできないかと思っていますので、もしなにか動きを起こせたら、ぜひその時はご協力ください!

福岡ミッションデーは雪嵐の中だった…!


2019年、世界はCOVID-19によるパンデミックに突入しました。けれど、オンラインで、エージェントたちは交流を続け、工夫を重ねていました。オンラインのIngress First Saturdayに参加して、みんなで集合写真をとる。自分も参加してみて思いましたが、どんな状況でも人がつながり、楽しむ道を見つけ出す。そして、それが未来につながっていく。エージェントに学ばされました。


2022年、10周年を迎える年、ロサンゼルスで数年ぶりに行われたリアルアノマリーに参加しました。エージェントたちの戦いに久しぶりに参加でき、ブライアン・ローズと二人で肩を組んだ時は、こんな時がまた来るなんて、と思いました。


ブライアンとロサンゼルスで


そして、自分の生まれ育った横浜の地でも数年ぶりにアノマリーが開かれる、心から楽しみにしていた矢先、新型コロナ陽性反応が出てしまい、皆さんと会うのは先延ばしになってしまいました。

横浜の地で、皆さんがまた新しい歴史を作り、頒布会を楽しんでいるのを見て、アメリカで一人地団駄を踏んでいました。でも、それよりも、SNSに流れてくる、久しぶりのアノマリーを楽しむ皆さんの笑顔や楽しそうなメッセージを読むのが、本当に嬉しくて、画面を見ながらニコニコしていました。


よかった、本当に、よかった。


今まで、続けてくれて本当にありがとう。

新しく、始めてくれて、本当にありがとう。


Ingressが今も続いているのは、皆さんの支えがあってこそです。

どうかこれからも、Ingressがずっと続いていけるように、サポートしてもらえたら嬉しいです。


こうして振り返ると、この10年のあいだに、数え切れないドラマが生まれてきました。

皆さんは自分の見ている世界を変え、新しい世界を作り上げてきたんだと思います。

そしてその旅は、これからも続いていきます。

ジョンも、Ingressのこれからを話している時はとても楽しそうなんですよ。

ぜひ、これからも、皆さんと一緒に歩いていけたらと願っています。


感謝と、尊敬を込めて


2020/10/15

「失敗を讃える日」に、ビデオ会議改善に向けた失敗の数々と向き合う



10月13日は「National Day for Failure 失敗を讃える日」だったらしい。
エジソンは「私は失敗していない。うまくいかない方法を1万通り見つけただけだ」という言葉を残したそうですが、本当にうまくいかないかどうかは試してみないとわからないわけですから、うまくいかないことを恐れずにとにかく色々やってみることが、先へとつながるわけですね。
僕も最近でも、散々、うまくいかないことを重ねています。
すぐに思い浮かぶのは、ビデオ会議改善に向けた自由工作の数々。せっかく失敗を祝う日なので、うまくいかなかったこと、うまくいったことをここで共有しようと思います。

ひとつめは、自分の話す声を消しながら話すこと。
僕は家でビデオ会議しているとき、時差の関係で深夜になったり、早朝になったりします。自宅は寝室とリビングしかなく、隣の部屋では家族が寝ているので、起こさないように気を使います。オンライン飲み会みたいに盛り上がってしまう場合は、トイレに籠もることもありました。イヤホンをつければ相手の声は周囲に聞こえないようにできますが、自分の声は消せません。なんかいい方法ないかな、と頭のどこかで考えていたある日、同僚社員が、「オフィスが開いても、会議室で(密を避けるために)一緒に話せない縛りがあったりしますよね。糸電話とかで話すしかないのかな…」

糸電話…。それだ!
いつだったか、自分の口につけて、自分の声をミュートするゴムカップをクラウドファンディングで見たことがあったのですが、見た目がひどく厳つくて、アイディアはわかるんだけど買う気にならなかったんですね。でも、糸電話なら子供の時にも遊んでるし、もしかしたらかわいい感じになるんじゃないか、と思いました。オンライン糸電話、なんかかわいくないですか。
で、こんな安めのピンマイクを糸に見立てて、

紙コップにくっつけて、

中に吸音材を仕込んで、音漏れを減らします。

そうしたら、こうなりました。


これなら、なんかちょっとひそひそ話しても自然?な感じだし、かわいげある感じでいけるんじゃない?

と思ったんですが、実際に使ってみたら、音漏れはだいぶ減るものの、やっぱりなんかちょっとビデオ会議の相手に違和感ありますね、なんで糸電話してんの、的な、となったんですね。いや、わりと機能はするんですよ、ほんとに。方向は悪くない。

で、どうしたら違和感減らせるかな、と考えたんですね。多分、糸電話という普段なら登場しないアイテムが出てくることが問題なのかな、と。たとえばオンライン飲み会をしている時に画面に出ていて自然な何かならいけるんじゃないのか。あ!と思いついて注文したのが、これ!
元祖食品サンプル屋

自分で食品サンプルが作れるというキットです。つまり、紙コップじゃなくてビールだったら、飲み会で手に持っていたって口に当てていたって、違和感まったくないですよね。まさか食品サンプルまでDIYする日が来るとは思いませんでしたが、キットがよくできているせいか、意外と楽しいんです。中にはこんなふうにビールと泡のモトが入っていて、お湯で温めてカップに入れていく感じです。
普通のサンプルと違うのは、今回中にマイクを仕込むので、二重にします。一回り小さめのプラスチックカップを用意して、中に浮かし、カップとカップの間にビールのサンプルを流し込んで固めます。

泡がちょっと手こずりましたが、できたのがこれ!


中にマイクを仕込みます。

Nianticは金曜日にTGIFという、アルコールもありで社員みんなで楽しく語らったり情報共有する時間があります。そこで試してみました!

もう、ビール飲んでるようにしか見えない!これなら自然です。わりと消音も効きます。やりました。

やったやった、と思ったのですが、大きな見落としがありました。
飲み会以外の普通の昼間の会議ではビールなんて持ってたら怒られますよね。社外の人とかとのミーティングでこんなの持ってたら、失礼です。
なんでそんな簡単なことに、作る前に気づかないのか、と思いますが、作ってる最中って、思いついたアイディアを形にしたいという気持ちでいっぱいなんですよね。やってみないとわからないこと、やってみてはじめて見えることってあります。

収穫は、この時使ったピンマイク。1000円くらいなのに、音質も自然で聞きやすく、コンデンサータイプなので外でミーティングするときにも雑音を拾いにくく活躍します。オススメです。



もう一つ紹介します。
以前、目がビデオ会議でしっかり目線が合うガジェットを作って、これは大成功でした。そして、他にもさらに手軽な方法ないかな、と考えました。
結局ディスプレイの真ん中、相手の目がある辺りにウェブカメラがあればいいのに、っていう話なんですよね。でも、市販のウェブカメラは大きすぎて画面の真ん中に置いたら相手の顔が隠れてしまう。それならウェブカムが小さければいいわけです。
イメージ的にはスマートフォンに使われているような小型のカメラモジュールですよね。USBでつなげば手軽につなげるようなものがあれば理想です。
こういう時に足が向くのは秋葉原です。NHKの「ドキュメント72時間 - 秋葉原 電子部品に魅せられて」でも取材された千石電商さんに行ってきました。

NHK ドキュメント72時間「秋葉原 電子部品に魅せられて」神回でした…



店員の方にほしいものを相談したら、それならこういうのはどうでしょうか、とUVC (USB Video Class)に対応している小型カメラモジュールをすぐに見つけてくれました。基盤むき出しでサイズも小さく、USBでつなげばすぐウェブカムとして使える、ほぼ理想的です。こういう一を聞いて十を知り、サービスしてくれるお店ならではの体験は、オンラインでは味わえません…。



さらに、これを画面の真ん中にセットできるようなスタンドが作れないかな…と探したら、ケーブルを中に通して基盤を立てられそうなアクリルパイプ(320円)と…

それを垂直に立てるための足場になりそうな、ワッシャー入りゴム足(50円)

応用できそうな部品がすぐにみつかり、しかも安い…。さすが千石電商さん。感動します。
帰ってさっそくざっと組み立てて、実験してみます。


おお!いいんじゃないでしょうか! USBつないだだけでちゃんと動作します。これくらいのサイズなら、まあ、いいかも、と思えます。
ただ、こうなると欲が出てきます。横向きにするとほぼ基盤の薄さになるので、5mm四方くらいの鏡を使って潜望鏡のようにすればさらに目立たなくできるかも、とか、それこそ基盤から外してカメラだけにして相手の瞳辺りに重ねられないか、とか。
そういう意味では失敗ではないけど、まだ途上というか、うまくやればいい感じになりそう、というところですね。発展途上。



ここまでは自由工作的な感じでした。ソフト的にもいくつか試しています。
ビデオ会議をしていて、相手じゃなくて画面のサムネールの自分の画像が気になってしまうことってありませんか。僕はあります。そして時には、自分ばっかり見てしまっていることもあります。これは「メタ認知」に関わっていると僕は考えています。メタ認知というのは、ざっくり言えば、自分を客観視できる能力、つまり自らの認知を認知することです。
コールセンターやクレーム処理などの業務に携わる人の間では、小さな手鏡をデスクに置いて自分を映すことで、自分を客観視し、怒りや不安、ストレスや表情をコントロールしやすくすることで、冷静さを取り戻し、心に余裕を作ったりする助けにすることがあるそうです。鏡を見て話しかけたりするのは、自分を客観視するメタ認知能力を高めるトレーニングとして有効だそうで、ビデオ会議の間、話している自分の姿を見ることは、自分を客観視することでストレスを緩和し、自分の感情や反応をコントロールすることに役立っている可能性が高いです。とはいえ、ビデオ会議の最中、サムネールの方を見ると、視線がずれてしまいますよね。相手にも、サムネールの方ばかり見てるのかな、と伝わりますし、時と場合によっては失礼だと感じる人もいるかもしれません。

では、相手をきちんと見続けつつ、メタ認知を役立てるために自分の姿も自然に確認し、かつ視線をずらさないするにはどうしたらよいかと考えました。
ひとつ解決策となったのが、「PiP」というソフトです(MacOS向けのフリーウェアですが、Windowsでは OnTopReplica というソフトが人気のようです)。これはPicture In Picture という、任意のウィンドウの内容をクローンして、他のアプリがアクティブでも常に画面の一番手前に表示することができるものです。
PiPは、クローンした画面を常時手前に表示するだけでなく、ウィンドウの透明度を変更できます。この特徴を利用します。たとえばZoomでは設定で「デュアルモニタ」オプションを有効にし、一つのウィンドウに自分のサムネールをピンして、それをPiPでクローンします。クローンしたウィンドウのサイズを調整し、透明度を50%以下にして、相手の画像に重ねるとこんなふうになります。

自分がゴーストみたいですが(笑)、こうすることで、視線を外さずに、相手を見つつ自分も見ることができるようになります。メタ認知が違いを生みそうなミーティングでは使っていて、役立っている実感はあります。

とはいえ、Zoomではデュアルモニタでないと使えない、相手が少し見えづらくなる、重なっているのは気持ちわるいとか(笑)、できるなら改善したいところが出てきます。



とまあ、こんなふうに、散々、色々試していて、うまくいったこともあれば、いかないこともある、という感じですが、その度に学びがあります。失敗を恐れずやってみる、うまくいかなくても学びがある、そういうことを思い出すのが、フィンランド発の「National Day for Failure 失敗を讃える日」なんでしょう。素晴らしいですね。

10月13日に出せばいいのに、すでに15日になっていて、もう大失敗です。







2020/05/26

ビデオ会議で目線がバッチリ合う装置をDIYで作ってみた




先日ビデオ会議で、カメラのレンズに向かって話している自分に気づきました。

自分を映しているレンズは画面の端にあるので、画面の中心にいる相手を見ていると、視線が微妙にずれてしまいます。それよりは、相手の目を見たほうが、思いがより伝わる、と考えたわけです。ビデオ会議で相手の目をまっすぐ見て伝えようと思ったら、レンズを見て話すしかない。でもそうすると肝心の相手の顔は視界の端、見えにくくなってしまいます。相手の顔や反応を無視して、レンズに向かって話している姿は、ちょっと本末転倒です。かといって、画面の相手の顔を見れば、やっぱり視線は合いません。まあ、そんなのどうでもいいか、とも思いつつ、でも、なにかいい方法ないかな、と考えました。

 この課題、調べてみると様々な解決方法がすでに模索されています。今回はその中から、ハーフミラーを使う方法にしました。ハーフミラーはマジックミラーのようなもので、販売されるときも「ハーフミラー(マジックミラー)」みたいな表記で同じものとして売られていることも多いです。厳密には透過率などで定義されているようですが、今回の用途では、特にどっちでもこだわりません。下の図のように、45度に傾けたハーフミラーでタブレットに表示されたビデオ会議を反射し、ハーフミラーの裏側に設置したカメラで自分を撮します。こうすると、カメラが画面の向こう側にあるような感じになり、映っている相手の顔を見ながら、同時にカメラを見つめることができるようになります。テレビでカメラを見ながら原稿を読むために使われるテレプロンプターと仕組み的には変わりません。ただ、プロンプターは買うと数万円くらいしますので、自作することにしました。

ハーフミラーの仕組み

 まず、ハーフミラーを買います。大きさは、使うタブレットのディスプレイ部分のサイズや箱の大きさに合わせます。よくあるアスペクト比 3:4 のディスプレイなら、長辺の長さ四方のもので大体いけるでしょう。今回は長辺 19.7センチ の iPad を使うことにしたので、20センチ四方のものにしました。送料込みで 3600円くらい。透過率は10%のものが在庫があってすぐ発送できる、ということで、とりあえずそれにしました。

 次に、ダンボール箱を探します。大きさは使うタブレットやハーフミラーのサイズによります。幅は購入したハーフミラーの長辺より1センチくらい小さいもの。高さはタブレット自体の短辺以上、奥行きはタブレットの短辺より3センチ以上のものを探します。今回は、捨てられる箱の中から、蓋を開いたときに 幅19センチ x 奥行き22センチ x 高さ27センチのものが見つかったので使いました。
 

ハーフミラーとダンボール。ハーフミラーは向こうが少し透けて見えるのがわかると思います

 
 ダンボールの中を油性ペンなどで黒く塗ります。いわゆるマジックミラーですから、明るい方を反射し、暗い方をより透過するので、カメラ側は暗くする必要があるのです。全部塗る必要はなくて、ハーフミラーに映る部分、4面を塗ります。
 あとは、側面に、ハーフミラーとiPadを刺す溝をそれぞれ切り抜くだけです。今回は下のような図面にしました。

図面のPDFはこちらから

 最後にウェブカムを箱の奥面にセットします。このLogitechのウェブカムはカメラマウント用のネジ穴がついていたので、裏面に穴を開けてゴリラポッドで挟み込むようにしてセットしました。
このとき、カメラのレンズが、ビデオ会議で相手の目の高さに来るように調整します。だいたい、画面の真ん中くらいの高さです。
手持ちのウェブカムによっては、マジックテープを使ったり、裏面にレンズサイズの穴をあけてくっつけて置いたりと、応用してもらえたらと思います。



 これでもう完成です。溝にハーフミラーとタブレットを刺してみましょう。



 制作時間は1時間くらいでしょうか。油性ペンで塗るのを黒画用紙などを貼ることにすれば、もっと早くできると思います。

 今回はDuet(Sidecarでも同じです)で、iPadをセカンドディスプレイとして使い、ウェブカムはMacにつないでいます。鏡に映るので、画面が左右反転しますから、ソフトウェア的にウィンドウをあらかじめ反転させて最終的に正しく見えるようにします。無料で配布されている Flip Mac Window Utility を使わせてもらいました。

 早速テストしてみました。これは素晴らしい。相手の顔を見ながら、相手の目を見て話すことが出来ます。ばっちりです。

ちゃんと目線が合う!ウェブカムによっては光でどこにレンズがあるかわかります


 この箱は、アプリを活用すれば、テレプロンプターとしても使うことができます。ビデオ会議では事前に用意した原稿や資料を読んで伝えたいときもありますが、そんなとき手元や別画面を見ていると読んでいることが見え見えです。この箱を使えば、こんなふうに相手や聴衆を見つめながら、原稿を読むことができます。無料のテレプロンプターアプリでも、先述の Flip Mac Window Utility で反転させればいい感じになるかと思います。

原稿を読んでいるのに視線は画面にちゃんと向いている

 作ってみて意外な発見だったのは、こうして箱にすることで、相手がその中に来ているような、奇妙な箱庭的実在感が生まれることです。この感覚は面白い。生まれてきたインスピレーションを手繰り寄せ、とりあえず、机の下の下半身を印刷した紙をタブレットの下に貼り付けてみます。
机の下の写真を貼り付けたら、そこに住んでいるかのような生々しい存在感が!


 おお。なんか、机にいるみたいで、俄然生き生きしてきました。まるでそこに住んでいるみたいに感じます。

 猫を置いてみたらどうだろう。
 なごみます。シリアスな話をしていても、猫がいれば心も和らぎます。
 相手とこたつで話していて、そこに猫がいるような、生活感が出てきます。

猫が中で寝ているコタツで話しているようだ…!

  
 これ、いいです。
 思っていた以上に大きな可能性を感じます。箱の外装や内装次第で、さらに楽しく存在感が増してきそうです。ビデオ会議に箱庭的な面白さが加わります。これなら、ずっと映しておいても面白いかもしれない。

 
 次はあなたの番。ぜひ! 4000円くらいで、工作気分も楽しめますよ。