2020/10/15

「失敗を讃える日」に、ビデオ会議改善に向けた失敗の数々と向き合う



10月13日は「National Day for Failure 失敗を讃える日」だったらしい。
エジソンは「私は失敗していない。うまくいかない方法を1万通り見つけただけだ」という言葉を残したそうですが、本当にうまくいかないかどうかは試してみないとわからないわけですから、うまくいかないことを恐れずにとにかく色々やってみることが、先へとつながるわけですね。
僕も最近でも、散々、うまくいかないことを重ねています。
すぐに思い浮かぶのは、ビデオ会議改善に向けた自由工作の数々。せっかく失敗を祝う日なので、うまくいかなかったこと、うまくいったことをここで共有しようと思います。

ひとつめは、自分の話す声を消しながら話すこと。
僕は家でビデオ会議しているとき、時差の関係で深夜になったり、早朝になったりします。自宅は寝室とリビングしかなく、隣の部屋では家族が寝ているので、起こさないように気を使います。オンライン飲み会みたいに盛り上がってしまう場合は、トイレに籠もることもありました。イヤホンをつければ相手の声は周囲に聞こえないようにできますが、自分の声は消せません。なんかいい方法ないかな、と頭のどこかで考えていたある日、同僚社員が、「オフィスが開いても、会議室で(密を避けるために)一緒に話せない縛りがあったりしますよね。糸電話とかで話すしかないのかな…」

糸電話…。それだ!
いつだったか、自分の口につけて、自分の声をミュートするゴムカップをクラウドファンディングで見たことがあったのですが、見た目がひどく厳つくて、アイディアはわかるんだけど買う気にならなかったんですね。でも、糸電話なら子供の時にも遊んでるし、もしかしたらかわいい感じになるんじゃないか、と思いました。オンライン糸電話、なんかかわいくないですか。
で、こんな安めのピンマイクを糸に見立てて、

紙コップにくっつけて、

中に吸音材を仕込んで、音漏れを減らします。

そうしたら、こうなりました。


これなら、なんかちょっとひそひそ話しても自然?な感じだし、かわいげある感じでいけるんじゃない?

と思ったんですが、実際に使ってみたら、音漏れはだいぶ減るものの、やっぱりなんかちょっとビデオ会議の相手に違和感ありますね、なんで糸電話してんの、的な、となったんですね。いや、わりと機能はするんですよ、ほんとに。方向は悪くない。

で、どうしたら違和感減らせるかな、と考えたんですね。多分、糸電話という普段なら登場しないアイテムが出てくることが問題なのかな、と。たとえばオンライン飲み会をしている時に画面に出ていて自然な何かならいけるんじゃないのか。あ!と思いついて注文したのが、これ!
元祖食品サンプル屋

自分で食品サンプルが作れるというキットです。つまり、紙コップじゃなくてビールだったら、飲み会で手に持っていたって口に当てていたって、違和感まったくないですよね。まさか食品サンプルまでDIYする日が来るとは思いませんでしたが、キットがよくできているせいか、意外と楽しいんです。中にはこんなふうにビールと泡のモトが入っていて、お湯で温めてカップに入れていく感じです。
普通のサンプルと違うのは、今回中にマイクを仕込むので、二重にします。一回り小さめのプラスチックカップを用意して、中に浮かし、カップとカップの間にビールのサンプルを流し込んで固めます。

泡がちょっと手こずりましたが、できたのがこれ!


中にマイクを仕込みます。

Nianticは金曜日にTGIFという、アルコールもありで社員みんなで楽しく語らったり情報共有する時間があります。そこで試してみました!

もう、ビール飲んでるようにしか見えない!これなら自然です。わりと消音も効きます。やりました。

やったやった、と思ったのですが、大きな見落としがありました。
飲み会以外の普通の昼間の会議ではビールなんて持ってたら怒られますよね。社外の人とかとのミーティングでこんなの持ってたら、失礼です。
なんでそんな簡単なことに、作る前に気づかないのか、と思いますが、作ってる最中って、思いついたアイディアを形にしたいという気持ちでいっぱいなんですよね。やってみないとわからないこと、やってみてはじめて見えることってあります。

収穫は、この時使ったピンマイク。1000円くらいなのに、音質も自然で聞きやすく、コンデンサータイプなので外でミーティングするときにも雑音を拾いにくく活躍します。オススメです。



もう一つ紹介します。
以前、目がビデオ会議でしっかり目線が合うガジェットを作って、これは大成功でした。そして、他にもさらに手軽な方法ないかな、と考えました。
結局ディスプレイの真ん中、相手の目がある辺りにウェブカメラがあればいいのに、っていう話なんですよね。でも、市販のウェブカメラは大きすぎて画面の真ん中に置いたら相手の顔が隠れてしまう。それならウェブカムが小さければいいわけです。
イメージ的にはスマートフォンに使われているような小型のカメラモジュールですよね。USBでつなげば手軽につなげるようなものがあれば理想です。
こういう時に足が向くのは秋葉原です。NHKの「ドキュメント72時間 - 秋葉原 電子部品に魅せられて」でも取材された千石電商さんに行ってきました。

NHK ドキュメント72時間「秋葉原 電子部品に魅せられて」神回でした…



店員の方にほしいものを相談したら、それならこういうのはどうでしょうか、とUVC (USB Video Class)に対応している小型カメラモジュールをすぐに見つけてくれました。基盤むき出しでサイズも小さく、USBでつなげばすぐウェブカムとして使える、ほぼ理想的です。こういう一を聞いて十を知り、サービスしてくれるお店ならではの体験は、オンラインでは味わえません…。



さらに、これを画面の真ん中にセットできるようなスタンドが作れないかな…と探したら、ケーブルを中に通して基盤を立てられそうなアクリルパイプ(320円)と…

それを垂直に立てるための足場になりそうな、ワッシャー入りゴム足(50円)

応用できそうな部品がすぐにみつかり、しかも安い…。さすが千石電商さん。感動します。
帰ってさっそくざっと組み立てて、実験してみます。


おお!いいんじゃないでしょうか! USBつないだだけでちゃんと動作します。これくらいのサイズなら、まあ、いいかも、と思えます。
ただ、こうなると欲が出てきます。横向きにするとほぼ基盤の薄さになるので、5mm四方くらいの鏡を使って潜望鏡のようにすればさらに目立たなくできるかも、とか、それこそ基盤から外してカメラだけにして相手の瞳辺りに重ねられないか、とか。
そういう意味では失敗ではないけど、まだ途上というか、うまくやればいい感じになりそう、というところですね。発展途上。



ここまでは自由工作的な感じでした。ソフト的にもいくつか試しています。
ビデオ会議をしていて、相手じゃなくて画面のサムネールの自分の画像が気になってしまうことってありませんか。僕はあります。そして時には、自分ばっかり見てしまっていることもあります。これは「メタ認知」に関わっていると僕は考えています。メタ認知というのは、ざっくり言えば、自分を客観視できる能力、つまり自らの認知を認知することです。
コールセンターやクレーム処理などの業務に携わる人の間では、小さな手鏡をデスクに置いて自分を映すことで、自分を客観視し、怒りや不安、ストレスや表情をコントロールしやすくすることで、冷静さを取り戻し、心に余裕を作ったりする助けにすることがあるそうです。鏡を見て話しかけたりするのは、自分を客観視するメタ認知能力を高めるトレーニングとして有効だそうで、ビデオ会議の間、話している自分の姿を見ることは、自分を客観視することでストレスを緩和し、自分の感情や反応をコントロールすることに役立っている可能性が高いです。とはいえ、ビデオ会議の最中、サムネールの方を見ると、視線がずれてしまいますよね。相手にも、サムネールの方ばかり見てるのかな、と伝わりますし、時と場合によっては失礼だと感じる人もいるかもしれません。

では、相手をきちんと見続けつつ、メタ認知を役立てるために自分の姿も自然に確認し、かつ視線をずらさないするにはどうしたらよいかと考えました。
ひとつ解決策となったのが、「PiP」というソフトです(MacOS向けのフリーウェアですが、Windowsでは OnTopReplica というソフトが人気のようです)。これはPicture In Picture という、任意のウィンドウの内容をクローンして、他のアプリがアクティブでも常に画面の一番手前に表示することができるものです。
PiPは、クローンした画面を常時手前に表示するだけでなく、ウィンドウの透明度を変更できます。この特徴を利用します。たとえばZoomでは設定で「デュアルモニタ」オプションを有効にし、一つのウィンドウに自分のサムネールをピンして、それをPiPでクローンします。クローンしたウィンドウのサイズを調整し、透明度を50%以下にして、相手の画像に重ねるとこんなふうになります。

自分がゴーストみたいですが(笑)、こうすることで、視線を外さずに、相手を見つつ自分も見ることができるようになります。メタ認知が違いを生みそうなミーティングでは使っていて、役立っている実感はあります。

とはいえ、Zoomではデュアルモニタでないと使えない、相手が少し見えづらくなる、重なっているのは気持ちわるいとか(笑)、できるなら改善したいところが出てきます。



とまあ、こんなふうに、散々、色々試していて、うまくいったこともあれば、いかないこともある、という感じですが、その度に学びがあります。失敗を恐れずやってみる、うまくいかなくても学びがある、そういうことを思い出すのが、フィンランド発の「National Day for Failure 失敗を讃える日」なんでしょう。素晴らしいですね。

10月13日に出せばいいのに、すでに15日になっていて、もう大失敗です。







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